認知症介護で注目されるコミュニケーション技法

介護現場でよく耳にするバリデーション療法とは、アメリカのソーシャルワーカーであるナオミ・ファイル氏が提案したコミュニケーション療法です。認知症の診断を受けた高齢者へ、介護者が傾聴や共感によるコミュニケーションを取るための技法で、それによって得られる効果に注目が集まっています。

バリデーション療法では、認知症の高齢者にみられる徘徊や大声を出す行動には意味があると考え、高齢者の話に意味を傾け、認めながら信頼関係を深めることによって、安心感を持ってもらうということを目的にしています。日本では2003年にバリデーション療法の学会が設立され、2006年には公認を受けて各地でトレーニングが開講されるようになりました。

バリデーション療法には、基本となる14のテクニックがありますが、全てのテクニックを使う必要はなく、実践する順番も決められてはいません。認知症の方の症状に合わせて使い分けながら、コミュニケーションを重ねることで、それぞれの方の思いや言動の本質に近づき、不安やストレスを解消していくことがポイントになっています。ただし、どの場合においても傾聴と共感が重要であり、対象者のありのままの感情を引き出していくことが重要です。また、ありのままの感情を引き出すことができたら、それを受け入れて、フラストレーションの緩和や、信頼関係を築くことで、介護する側も自信につなげていくこともバリデーション療法では欠かせません。

現在の高齢化社会においては、今後も認知症の高齢者は増加することが予測されるので、それに伴い、介護士や看護師だけでなく、家族による介護も増えていくでしょう。ですから、バリデーション療法は、より良い介護を行うためにも、身につけておきたいテクニックだといえます。※併せてチェック!>>>「探求」と「受容」のコミュニケーション術